くも膜下出血について
くも膜下出血とは
脳は3層の膜によって守られています。外側から、硬膜・くも膜・軟膜です。このうち、くも膜と軟膜の間にあるくも膜下腔という隙間において、動脈が破裂し、血液が急激にくも膜下腔に流入した状態のことをくも膜下出血と言います。「バットやハンマーで殴られたような」「これまでに経験したことのない」などの表現をされる程、「突然」の「激しい頭痛」症状を主訴とされることが多いです。それ以外にも悪心や嘔吐、意識障害やけいれん、頚部痛を伴うこともあります。

くも膜下出血の原因
Ⅰ)脳動脈瘤の破裂
くも膜下出血の原因として最も多いのは「脳動脈瘤の破裂」です。全体の8割以上を占めます。
脳動脈瘤とは、脳動脈の血管壁が薄くなったりもろくなることで、そこが膨らんで血液が入り込み、コブのような形状になります。このコブのことを指し、破裂するとくも膜下出血となります。
脳動脈瘤ができる原因は未だ詳しく解明されていませんが、脳動脈瘤の破裂は未然に防ぐことができるため、破裂を防ぐことがくも膜下出血を予防することに繋がります。

Ⅱ)脳動静脈奇形
次に多いのは脳動静脈奇形という脳血管異常で、全体の0.5~1割程度です。なぜナイダスができるか、理由は未だわかっていませんが、ナイダスができるタイミングは胎児のときからと言われており、血管が動脈、毛細血管、静脈に正しく分岐しなかったことから起こると言われています。
通常、動脈と静脈の間には、毛細血管が存在し、動脈→毛細血管→静脈の順で血液が流れます。しかしながら脳動静脈奇形では、動脈と静脈の間にナイダスと呼ばれる破綻しやすい異常な血管の塊ができ、動脈→ナイダス→静脈の順で血液が流れます。通常は動脈からの血液が毛細血管で細かく分散されて静脈へ流れますが、脳動静脈奇形では毛細血管のように分散されず、圧力が高いまま血液が流れることで血管が破裂し、くも膜下出血や脳出血が引き起こされます。

Ⅲ)その他
脳出血での出血がくも膜下腔に流れることで起こる場合や、もやもや病で血管が破裂することで起こる場合など、頭蓋内疾患が原因となることもあります。また、事故や外傷で頭を強くぶつけた場合にくも膜下出血が生じることもあり、原因は様々です。
くも膜下出血の治療法
私たちの身体は出血をするとかさぶたができて止血されます。くも膜下出血発症直後も、出血した部分は一時的に止血されますが、血圧の上昇などで再出血することもあり、頭蓋内圧の上昇などで、脳全体がダメージを受け、予後が非常に不良となることが多くあります。そのため、くも膜下出血の急性期治療では、脳動脈瘤の「再出血」を防ぐことが重要とされています。

Ⅰ)内科的治療
くも膜下出血の急性期治療では、再出血を防ぐために血圧の厳密な管理が必要となります。基本的に降圧薬を使用します。140/90mmHg以下を目安に行い、鎮痛・鎮静薬を投与することで、急激な血圧の変化を防ぎ、再出血を予防します。
Ⅱ)外科的治療
1)開頭クリッピング術
頭を開けて脳動脈瘤の根本に直接チタン製のクリップをかけ、脳動脈瘤へ血液が流れないようにする手術です。(手術の)侵襲性もあるため、高齢者の方には不向きとなりますが、直接術部を見ながら行うため、確実性が高く、同じ部分の再発リスクは低いといえます。

2)コイル塞栓術
足の付け根から細い管(カテーテル)を挿入し、脳動脈瘤まで到達させ、脳動脈瘤内へコイルをくるくと詰めて塞栓する「コイル塞栓術」があります。脳動脈瘤にコイルを詰めることで、血液が脳動脈瘤への流入を防ぎ、再破裂を予防します。頭を開けずに治療できるため、高齢者の方でも施行可能です。
外科的治療法は、それぞれメリット・デメリットがあります。
患者様の年齢、動脈瘤の大きさ、形態、部位等に応じていずれかの治療を選択することになります。
くも膜下出血の予防法
Ⅰ)生活習慣の見直し
日常生活で特に気を付けていただきたいことは、「血圧のコントロール」です。脳動脈瘤ができる原因は詳しく解明されていませんが、高血圧や動脈硬化が一因となっていると言われています。
高血圧や動脈硬化の原因は、塩分過多やストレス、喫煙といった生活習慣からくるものであるため、生活習慣を改善することが脳動脈瘤の発生を予防し、くも膜下出血の予防に繋がります。
改善すべき生活習慣項目

Ⅱ)外科的予防治療
急性期治療で脳動脈瘤の再出血を防ぐための治療と同様、開頭クリッピング術やコイル塞栓術、また、未破裂脳動脈瘤の場合にはフローダイバーターステント留置術といって網目の細かいステントを留置し、脳動脈瘤内に流入する血液量を減少させて破裂を防ぐ治療もあります。
Ⅲ)脳動脈瘤の早期発見
くも膜下出血の予防で最も大切なことは、「脳動脈瘤の早期発見」です。脳動脈瘤の破裂を防ぐことが、くも膜下出血の予防に繋がります。
脳動脈瘤を早期で発見するためには、定期的な検査が必要です。しかしながら、私生活が忙しくてなかなか医療機関への受診が出来ない方もいらっしゃるかと思います。そういった方でも検査ができるよう、最近では「短時間・低価格」で検査ができる脳ドックを提供している医療機関も多いです。また、少しでも自分の症状に異変を感じた場合は、ためらわずすぐに医療機関を受診しましょう。